「おい! 誰かいねぇのか!?」


私も剣斗くんの隣に立って、ドンドンッと扉を叩いてみたけれど、誰も気づいてくれた様子はない。


「ボディーガードは外で見張り、使用人は今頃夕飯の支度やらで忙しいのか……。仕方ねぇ」


呼びかけるのをやめた剣斗くんは、扉に寄りかかるようにして座る。


「時間が経てば、俺たちに気づくだろ」


不思議……。
閉じ込められたのに、全然怖くない。
剣斗くんが冷静だからか、私も平常心でいられた。


「おい、なんで子ども部屋にオートロックなんてつけてんだよ。しかも外側からしか開けられねぇって、まるで監禁部屋じゃねぇか」


私を見上げて尋ねてきた剣斗くんに苦笑いしながら、隣に腰を下ろす。


「私は覚えてないんだけど……。小学生1年生のときに誘拐されたことがあったらしいの」


急に重い過去を打ち明けられた剣斗くんは、困惑したように私を見つめる。

それに肩をすくめながら、私はこの部屋にオートロックがつけられたいきさつを話す。


「無事に助けられたみたいなんだけど、私はそのときのことをショックで忘れちゃって……」

「誘拐されたなら、ショックになるのも無理ねぇよな」

「うん……。それで、心配したお父さんが私とお母さんだけをこの別荘に住まわせて、療養させたんだって」

「なるほどな。だからお前、小学生のときにここに住んでたのか」


腑に落ちた様子の剣斗くんに、私は肯定の意味をこめて首を縦に振る。