「私、小さいとき……って言っても小学生くらいのときなんだけど、この屋敷で暮らしてたの」


剣斗くんは相づちを打ったりはしなかったけれど、静かに耳を傾けてくれている。
なので、私は話を続けた。


「本邸に移ったのは中学に上がってからかな。剣斗くんはどんな家で生活してるの?」

「別に、普通の家だ。俺は庶民だからな」


そっけない言い方に、心が折れそうになる。

けれど、私は努めて明るく話しかける。


「そうなんだ! あ、ここはね、中学生になるまで私が使ってた部屋だよ」


私が案内したのは、子ども部屋。

お人形もランドセルも、小学校で使っていた教科書もそのまま残ってる。


「懐かしい!」


どんどん中に入っていくと、剣斗くんははぁっとため息をつきながら私に続く。
そのときだった。

ガチャンッと音がして、すぐに電子音が鳴る。


「おい、今の音はなんだ?」


剣斗くんのとまどった声に、私は重大なことを思い出す。


「どうしよう……。この部屋だけ、扉が閉まると自動的に電子ロックがかかるの!」

「はぁ!?」

「この部屋に入ったの久しぶりで、忘れてたっ。しかも、外からじゃないと開けられない!」


血の気が失せていくのを感じつつ説明すると、剣斗くんは扉に向かって叫ぶ。