イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。

「もう、十分だよ!」

「俺はまだ物足りてねぇんだけど?」


あっさりと言う剣斗くん。
物足りてないって……。

剣斗くんはこの状況を楽しんですらいるように見えて、背中に嫌な汗が伝う。


「剣斗くんは、なんのために戦ってるの? 男の子を助けるためじゃなかったの?」


お願いだから、そう言って……。

祈るような気持ちで尋ねると、剣斗くんは片眉を上げた。


「助けるため? はっ、違えよ。この不良どもが目障りだった。だから排除した。ただそれだけだ」

「剣斗くん……」


人を傷つけることに優越感さえ抱いていそうな剣斗くんの表情に、なんとも言えない気持ちになる。

しばらく言葉を失っていると、騒ぎを聞きつけて教員が駆けつけてきた。

剣斗くんはまた舌打ちをして、私のところに戻ってくる。


「面倒だから逃げんぞ」


そう言って剣斗くんは私の手をつかむと、足早にその場を離れるのだった。

日が暮れ始めた頃、私たちは森泉家に帰ってきた。


「じゃ、俺は帰る」


家まで送り届けて、すぐに踵を返そうとした剣斗くんにお父さんが声をかける。