「好きな女に触れてんだから、俺だって冷静じゃいられねぇっての」

「私も……だよ。心臓が好きだって騒いで止まらなくなるの、剣ちゃんにだけ」


どうしようもないほどあふれてくる想いをぶつけると、剣ちゃんは一瞬苦しげに眉を寄せる。


「今の言葉、すげぇ破壊力。録音しときゃよかったな」

「その発想、すごく危ない気がする」

「お前相手にだけ、俺はやばいやつになるらしい。せいぜい、気をつけろ」


意地悪く笑う剣ちゃんに、鼓動が強く脈打ち始める。

ううっ、今の笑顔かっこよかったな。


「愛菜、目ぇ閉じろ」

「はい……」


観念して瞼を閉じると、剣ちゃんがそっとキスをしてきた。

優しくて、強引で、ときどき意地悪。

矛盾だらけの剣ちゃんのキスに、翻弄されてばかりの私だけれど……。

この先、なにがあっても守ってくれる。

そう揺るがない信頼を向けられる相手は剣ちゃんだけ。


「愛菜」


真っ暗な視界の中で、剣ちゃんの囁きが耳をくすぐる。


「これからも一生、俺に守られてな」


優しい命令。

それは世界でいちばん、私を幸せにできる魔法の言葉だった。


END