「俺は気が短いんです。早く答えをくれなければ……」


言葉を切った雅くんがためらうことなく、ホースの根元にある蛇口をひねった。

ショーケースの中に勢いよく水が注がれて、サーッと全身の血の気が引いていく。

嘘でしょう?
雅くんは、私をこのまま溺れさせようとしてるの?

どうしよう。
このままじゃ窒息するかもしれない。
でも……。


「お父さん、屈しちゃダメ!」


気づいたら叫んでいた。


「私は大丈夫。きっと剣ちゃんが来てくれるから、だから負けないで!」


その私の態度が気に入らなかったのか、雅くんはピクリと眉を動かした。


「森泉先生、3分後にかけ直します。それまでに決めておいてくださいね」


ブチッと一方的に通話を切ると、雅くんは忌々しそうに私を見た。


「この状況で、まだそれだけの虚勢を張れるとはね。でも、あまり余計な口を挟まないでくれる?」


雅くんが罰とばかりに水の勢いを強める。


怖いけど、でも信じてる。

祈るように両手を握りしめて、私は私にとっての希望を頭に思い浮かべた。

剣ちゃん――。