「俺はただ、お前を誰にも取られたくなくて、焦って……束縛してる自分にちょっと嫌気が差したっつうーか」


言いにくそうに説明してくれる剣ちゃんに、私はくすっと笑う。


「取られるもなにも、私は剣ちゃんのものなのに」

「なっ……」

「だからね、剣ちゃんも私のものってことにしても……いい?」


思い切って頼んでみると、剣ちゃんは目を白黒させる。

あれ、ダメだったかな?

私のものになって、なんて……生意気すぎた!?

心の中で不安になっていると、剣ちゃんは私の腕を引っ張って自分の膝の上に座らせる。


「とっくにお前のもんだろ」

「え?」

「俺の心も、この身体も全部……。俺は愛菜にあげてるつもりだって言ってんだよ」

熱っぽい剣ちゃんの視線に、全身が火照りだす。

「うれしい……すっごく、うれしい」


私は剣ちゃんの腕をぎゅっとつかんで、大好きがあふれて胸が焦がれるような、幸せな苦しさにじっと耐えた。


「愛菜」


恥ずかしさのあまり、唇を噛んでうつむいていると、剣ちゃんが下から顔を覗き込んでくる。


「真っ赤じゃねぇかよ」


ふっとうれしそうに笑った剣ちゃんに、いっそう頬が熱くなった。

剣ちゃんはすっと長い指で私の頬を撫でると、顎を掴んで強制的に上向かせる。


「好きだ」

「私も……私も好き」

「ん、知ってる」


剣ちゃんは満足げに口角を上げると、味わうようにゆっくりとキスをした。

唇は重ねたままベッドに押し倒されて、私は剣ちゃんの胸を軽く叩く。


「シ、シワになっちゃう。剣ちゃんの服、買ってもらったばっかりなのに」

「別にいいだろ。俺の前でしか着ねぇんだから」


剣ちゃんは私の心配をよそに、またちゅっと音を立ててキスをした。


「でも……」


長く大切に着たいし……。

なかなか引き下がらない私に、剣ちゃんはしびれを切らしたのかもしれない。

私のスカートの裾をまくり上げるようとしたので、慌ててその手を押さえる。


「剣ちゃん!?」

「シワになんのが嫌なら、俺が脱がせてやるけど」

「それはちょっと……」


いろいろ、恥ずかしすぎる。

硬直している私に、剣ちゃんは不敵に笑って――。


「ばーか、冗談だよ。じゃ、黙って俺を受け入れろ」


少し楽しそうに、困っている私に口づけた。