「竹部さんは?」

美由紀の動いていた口が一瞬止まり、一点を見つめたまま口に残っていたものをゴクンと飲み込む。

そして、視線を動かさずに小さく答えた。

「わからない」

「まだ聞いてないの?」

昨晩はあれだけ心配していたから、看護師にでも既に確認していると思っていた私は不思議に感じる。

そして、美由紀は最後の一口を口にいれると微かに口元を緩めて言った。

「彼のことはもういいの」

「え?」

「竹部さんとは繋がってはいけない縁だったのよ。美南も巻き込んで傷つけて、そして竹部さんも私も今こんな状態。昨日、美南が帰ったあと、一晩考えて私達は結ばれたってうまくいきっこない関係なんだって答えに行き着いたの」

「そんな……」

彼女の昨晩泣き腫らした瞼がうっすらと赤みを帯びている。

「こんな話、美南に言うことじゃないよね。私達の勝手でこんなにも迷惑かけたのに」

美由紀、何言ってるの?

あんなにも愛した人でしょう?

胸の奥にふつふつと情けない悔しいような気持ちが沸いてくる。

「そんなのおかしいよ」

思わず、彼女の横顔に強い口調になってしまった。

美由紀も驚いた顔で私に視線を向ける。