階段を降りてると、後ろから沙和がイタズラっぽく言ってきた。

「ねえ、平良、もしかして私に欲情した?」

うわー。
ずるい。

したに決まってんじゃん。

「うるせえよ。」

俺は仕方なくそう答える。

「仕方ないなー。いつか気が向いたら、アレ、使わせてあげる。」

背中を向けてても沙和が笑いながら言ってるのが伝わってくる口調だ。

いつだよ。
気が向くのいつだよ。

待てねえよ。

俺は「はいはい」とは言うものの、全然「はいはい」とは思わない。

沙和は後ろで鼻歌を歌う。

オンチだっつの。

つい笑ってしまう。

野球部のみんなは誰も知らない。
沙和はそんなに経験豊富な女じゃない。

不思議なことに、そう思った途端に一気に俺色に染めたくて仕方なくなる。

うわー、俺って独占欲強い。

初めて気付いた。

俺はこれからしばらく悶々とさせられるんだろうな。

そんな予感を感じながら、いつも通り沙和ん家に向かった。