家に帰ってシャワーを浴びる。
いつもはここでひと眠りするところだが、そんなことしてたら花火の時間になってしまう。
今日は寝るのを諦めて(今すぐぶっ倒れそうなほど疲れたけど)店に急いで行こう。

身じたくを整えて時計を見る。
18時過ぎてる。
もう店に行ったら早いか?

いや、でもなんかザワザワしてダメだ。

早めに行って、まずは沙和に謝ろう。
そして楽しく花火を見る。

大人だ、俺は。

沙和ん家に向かう。
まだ開店したばっかりの時間帯だ。

店のドアを開けると、おばさんと真っ先に目が合った。

どこか気まずそうな顔だ。

いつものテーブルにはまだ沙和の姿はない。
まだ部屋にいるのかな。

俺の視線を読んだのか、おばさんが近づいてきた。

「今日は沙和、いないけど。」
「え?」
「沙和、花火大会行ったから。」

えっ・・・
は、は、はな・・・

「塾の子達と行くって。」

じゅ・・・

塾の、奴らと、花火大会・・・

頭を強く打たれるような衝撃だった。

どうしよう、ダメだ。
ダメ過ぎる。

失恋だ。

「おばさん、ごめんなさい・・・ちょっと・・・」

俺はフラフラとそれだけ言うと、後ずさりするように店を出た。

「たぶん向こうの駅で18時半に待ち合わせだと思う!沙和、さっき家出たばかりだから!」

おばさんが情報をくれた。

さっき出たばっか!
間に合え!
間に合え、俺!

俺は自分家から自転車を走らせる。