「え?」

顔を離して、ほんの少しの間があった後、沙和が信じられないような表情で言う。

「え?」
「え?」

恥ずかしすぎてお互いの顔を見れない。

「いや、だって、今の流れならこうなるだろ。」
「うそ。平良、さっきまで泣いてたじゃん。」
「泣いてたからなんだよ。」
「私、慰めたかっただけで、べつに・・・」

お互いパニック。

自分でも、回らない頭で上辺だけの会話をしてるのが分かる。

沙和は怒ってんのか?

でも嫌だったらあんな抱き合うなんてしないはずだ。

え?あれは恋人としてのハグ?
それとも友情の・・・?

俺は「あっそ。」と言って立ち上がる。

沙和も立ち上がると、「帰る。」とぶっきらぼうに言った。

「そっか。」
「じゃあ。」

沙和が部屋を出ようとした。

「ご馳走様でしたって、おばさんに・・・」

俺はなぜか冷静を装ってそんなことを言う。

「分かった。じゃ。」

沙和はそう言うと、ほとんど走るように階段を降りて行った。

部屋に残された俺。

勢いでキスしてしまった。

やべえ。

これは、事件だ。
大事件。

明日、どうしよう。

沙和の気持ちが分からない。

明日どんな顔して沙和に会えばいいんだーーーーーーー!?