何を言ってるんだ。

「え?」

沙和がまた眉間にシワを寄せる。

ほら、引き返すんだ。
バカか、俺は。

「いや、いや、勘違い。なんでもない。」

頭をゴシャゴシャに掻く。

それだけは絶対にありえないのに。
なんで俺の口から出てしまったんだ。
願望が強すぎた。

少しの可能性に期待してしまった。

沙和は、俺から搾取して搾取して何も出なくなるまで利用し尽くしたいんだ。
そうなんだ。

俺は短く深呼吸する。

「じゃあ、沙和は俺に何してほしい?」

俺が聞くと、沙和は少し考えてこう言った。

「何してほしいって、私は普通に付き合いたい。」

わずかに静かな時間が流れる。

「え?普通にって何?」

思わず聞き返してしまった。

「普通にって、普通にだよ。」

沙和はコップに入った水を飲む。
あっけらかんとした顔だ。

ちょっと待ってください。
頭が追いつきません。

沙和は、何を求めてるんだ?
「普通」って一体何?

みんなは一体何をしてるんだ?

「だって今、普通に付き合ってるじゃん。」

確認の意味で言うと、沙和が「え?」と固まった。

これって普通に付き合ってるわけじゃないのか?
俺は一体どうすれば・・・

「他に、何かしてほしいことあったら随時言って。」
「してほしいって私が言うの?」
「じゃないと、俺分からないもん、沙和の考えてること。」

俺の口からはかなり情けない言葉しか出なかった。