イートインスペースにはカップルが一組。
空いている窓側のテーブルに座る。
『はい、お待たせ!』
明るい声に顔を上げると、春田くんの満面の笑み。
木のお皿に乗ってでてきた色とりどりのおかず。
タンドリーチキン、さつまいもとれんこんの甘露煮、エビとカリフラワーのバターソテー。
その隣にまるでお子様ランチのように丸く盛られた白いご飯。
どれもとても美味しそうに映る。
と言っても、配達のお弁当のプラスチックトレーでも充分美味しそうなんだけれど。
春田くんがカウンターへ帰っていく背中を見送ると、添えられたお箸を手に取る。
「いただきます」
春田くんの料理を口に入れると、錆び付いた気持ちがほろほろと解けていくような気分になる。
私はこんな風に誰かを幸せにすることができるのだろうか。
答えは否だ。
周りの人の顔を思い浮かべる。
伏屋室長、昭香先輩、花緒先輩、理央。
そして春田くん。
皆、誰かの人生に関わって
誰かを幸せにしてる。
私はそんな風にキラキラしている皆を
いつも羨ましいと思いながらも、自分からは何もしないで外から眺めていただけ。