本屋からの帰り道も会話はいまいち弾まないまま、あっという間に彼の家に到着した。
玄関の扉の鍵を開けるその背中を見つめる。
彼と付き合うようになって、わかるようになった事がある。
こうして線を引く時、彼はそれ以上追求しようとしてもその事について一切口を開かない。
頭の中で必死に考えた打開策も、こうなった彼には通用しないのかもしれない。
けれど以前と一つだけ、決定的に違う事がある。
まだ突き放された訳じゃない。
心の中で静かに決意を固めると、彼の手元へ視線を落とした。
その手が玄関の扉を開くと、いつものように私を先に玄関へ通す。
靴を脱ぐ後ろで扉が閉まる音を確認すると、意を決して振り返る。
「あ、あの…」
彼は傘立てに傘を差し込みながら少しだけ驚いた表情でこちらを見た。
いくら相手が恋人だとしても、やはり初めての事はいつだって緊張するものだ。

