「じゃあ、私はこれで」
『あ…、すみません。
僕が店員と勘違いして…呼び止めてしまって』
男性のその言葉は、私ではなく基へ向けられたものであったが、どうやら雰囲気から察するに基はそれに答える気はなさそうだ。
「そんな謝るような事じゃないです。
案内したのは私なんですから」
そう言って彼の元を立ち去る瞬間に、隣でぼそりと呟く声が聞えた。
『勘違い…ね』
「え?」
『いや、会計しておいで』
彼に聞き返すと、はぐらかすように笑顔を張り付けた。
いつか見た事がある、その表情。
これ以上探るな、と言わんばかりに線を引かれるその感覚。
もちろん、先程の男性とのやり取りといい、何も思い当たる節がないわけでもない。
それでも以前よりもずっと心が通じ合うようになってきたのだと思っていた。
けれどそれは私の勝手な思い込みなのだと突きつけられたような気がした。
悲しいような、虚しいような、そんな言いようのない感情を抱えたまま、彼の元を離れてレジカウンターへ向かった。

