店内に入ると、早々に彼と分かれ新刊のコーナーへと歩を進める。
私の目当ては大体小説の新刊なので、彼の目的とは違う事がほとんどだ。
それでも空いた時間に彼と一緒に読書を楽しむ時間は、大切な“二人の時間”だ。
それに最近は読書が楽しく思えてきている。
というのもこの本屋はポップや陳列方法もとても読書欲をくすぐるものばかりで、新刊が平積みにされている場所から少し入った先の本棚には、準新作等も見やすく陳列されている。
本や作家についてさほど詳しくない私でもこれ、といった一冊が見つかる。
今日もいつものようにその場所へ足を運ぶと、本棚に面出しされて並ぶ小説の表紙を一つ一つ眺めていた。
ふと気になった本を手に取ったその時、すぐ隣からこちらに呼びかける声が聞えた。
『あ…あの……』
「はい?」
その声にはっと顔を上げると、そこには紺色のスーツを着た若い男性が立っていた。
いかにも真面目そうなその風貌の男性は恐る恐る口を開いた。
『あの、本を探してるんですが…』

