COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―


駅の出口の外は、未だ勢いの衰える事ない雨が行く手を阻んでいた。

『…ちょっと待って』

手に感じていた温度がそっと離れると、彼は手にしていた傘を開きながら外へ踏み出した。
その背中の後に続こうとすると、彼はこちらを振り返って手を差し出す。

「あ…私も持っているので、大丈夫です」

『いいから、おいで』

我ながら野暮な事を言っているのは、充分にわかっている。

それでもまだ彼の世界に私がいるのだという事実に、未だ慣れないでいた。

差し伸べられた手にそっと手を伸ばすと、身体を引き寄せるように手が引かれる。
身体が彼の傘の中に収まると、雨の香りと混ざり合った彼の香りを近くに感じた。

数十メートル先。
本屋の自動扉の前に着くと、その距離がそっと離れる。

自動扉の中へ足を踏み入れると、本屋らしい厳かで神経質な香りとひんやりとした空気に包まれた。