気付けば、そろそろ彼女が到着してもおかしくない時間になっていた。

身体を傾けて、顔を窓に近付けると覗き込むように外の道路を見つめる。
この席からはこうすれば道路の少し先まで見られるので、お客さんがいない時はこうしてこの席に座って外を眺めている。

誰かをこんなにも待ち遠しく思う。

じれったくて、甘くて、そしてどこか苦しいこの時間に、彼女の事をそれほどまでに好きなのだと思い知らされる。

少し経った頃、道路の先から歩いてくる見慣れた姿を捉えた。
彼女はふと立ち止まると、無造作に髪の毛に手櫛を通している。

たったそれだけのことなのに、心臓の高鳴りは更に加速した。
今すぐにでも店を飛び出してしまいそうになる衝動をぐっと堪えて、その姿を見つめる。

その後、彼女はふいに視線を鞄の中へ向けた。
先程から鞄を探るように手を動かしている。

どうやら探し物をしているようだけれど、なかなか見つからないようだ。

彼女らしいといえばそうなのだけれど。
こんな風にどこか抜けているところだって、可愛くて堪らないと思ってしまう俺は相当重症だ。