『いや、しかしお前がそこまで女にハマるとはね』
「えぇ?」
さすが旧友とでも言うべきか、彼の全てを見抜いているような的確な一言に図星をつかれ、思わず間抜けな声が出る。
『昔は先約とか気にするタイプでもなかっただろ』
彼の言葉に遠い記憶を遡る。
そう言われてみれば、確かにそうかもしれない。
きっと昔の俺ならば、久しぶりに会う友達の予定を優先しただろう。
『俺、当時お前の前カノから相談されてたから。
お前は優しいけど、好かれてる自信がないって』
「え、そうなの?」
そんな話、初耳だ。
けれど当時、自分の進路の事で手一杯だった俺に、彼なりに気を遣って黙っていたのだろう。
『キスすらお前からあんまりしてこないって…、いや、知るかよ!って思ったわ』
彼はそうツッコミを入れると、再びケタケタと笑い始めた。
「そ…っかぁ、色々ごめん」
『いや、おめでと。よかったな』
「ん、また連絡するわ」
埋め合わせをする約束をした後、簡単に挨拶を交わすと電話を切ると画面に再び表示された電子時計を確認する。

