「俺は恋する乙女か何かか…」
自分を嘲笑するように独り言を吐き出したその時、テーブルの上に置かれたスマートフォンが振動する。
画面に視線を落とすと、大学時代の友人の名前が表示されていた。
店にもたまに遊びに来るが、ここ最近は忙しいようで一ヶ月近く会っていない事もあり、まだ彼にも彼女が出来た事を話していない。
頭の中を簡単に整理すると、通話マークを押した。
『もしもーし?章吾?』
「おー篤、久しぶり!」
『久しぶりー。今から店行こうと思うんだけど』
その言葉に、出だし早々に思考回路が停止する。
まさかこんなにも早くカミングアウトのタイミングが訪れるとは予想だにしていなかった。
「あ、いや…今日は…」
『あ、もう売り切れた?』
わかりやすくしどろもどろになるが、彼は何も気に留めていない様子で続けた。
『じゃあ何か買っていくわ!久しぶりに話したい事もあるし』

