「さ、理央も準備」

考えを断ち切るように立ち上がると、理央を花緒先輩から引き剥がす。
その時、ノックの音と共にオフィスの扉が開いた。

『こんにちはー!お弁当の配達でーす!』

いつもの明るい声と共に、扉の隙間から春田くんが姿を現した。
手にはお弁当の入ったオレンジ色のプラスチックのコンテナを抱えている。

両手が塞がっているので背中で扉を押し開けるようにしている格好だ。
急いで扉へ駆け寄ると、扉を開けるのを手伝う。

「大丈夫?」

『あ、本郷さん!ありがとうございます!』

そう言うと彼の人懐っこい笑顔がぱあっと咲いた。

先週、彼と恋人同士になり、それから会うのは二度目。
空いた時間を見つけては連絡を取り合ってはいるが、まだまだ気恥ずかしさは拭いきれてはいない。