そっと扉を開けて中へ入ると、すぐ左手にあるオープンキッチンに既に着替えを済ませた彼の姿があった。 電気ケトルからマグカップの中へお湯を注いでいる。 「あ、あの…」 『ああ、おかえり』 私の声に反応するようにこちらを向くと、至って自然な様子で私に言った。 上京してからというもの、おかえり、と言われる機会は地元へ帰省する時位しかなくなった。 誰もいない部屋に帰るようになって初めてその言葉の温かさを知った。