「すみません、なんせ田舎生まれなもんで」
へへ、と笑って見せると、彼は眉を下げて微笑んだ。
『…じゃあこの景色のおかげで、俺はお前を誘えたんだな』
誘い方こそ不器用だったものの
彼に一緒に帰ろうと誘われたあの日のことを思い出す。
時々、彼とはこういうシンクロが起こるのはきっと偶然じゃない。
自分の価値観なんて、他人に理解されなくても良いと思っていた。
でもこうして彼はいつも“私”を見つけてくれる。
その時、エレベーターが目的の階に到着すると、控え目な音が静かにそれを知らせた。
エレベーターを降りて歩を進めると、廊下から少し奥ばった所に玄関がある造りになっていて
玄関一つとっても、私の住む家とは比べ物にならない程、上品で重厚感がある。
目の前を歩く背中に視線を戻すと、すぐに彼は歩を緩めた。
いかにも高級そうなウッド調のブラウンの扉の前に立つと、開錠する音と共にその扉は開く。

