「買ったんですか!?すっごいなぁ…」
そう感嘆の声を上げた時。
『…日比野』
名前を呼ぶ声と共に、二の腕をトントンと叩く手。
隣を見ると、彼は後ろを振り返っている。
彼に倣って後ろを振り返ってみると、
エレベーターの壁面のガラスの向こう側から、外の景色が見える。
「わ…すっごい…!」
『晴れてたら、もっといい景色が見える』
夜景とかもすごく綺麗なんだろうな。
まるで自分だけが特別な存在になったような、そんな気分になれたりして。
「…私、城南線の電車から見える街の景色が大好きで。それでここに住もうって決めたんです」
ここに住んだおかげで、
有松さんともこうして恋人同士になることが出来た。
まだこの言葉を口に出す勇気はないので
外の景色に語り掛けるように、心の中だけで呟く。
彼は返事の代わりに私の顔を覗きこむと、まっすぐにこちらを見つめた。

