その距離に、先程の優しく触れるようなキスが頭を過ぎる。
体中の血液が一気に沸騰するような恥ずかしさに襲われて、思わず飛び退いた。
「あ…いや…、すみません。
テンション上がり過ぎました…」
たどたどしく呟いた弁明を聞き終える前に、私の手に触れた少し骨ばった指の感触。
『ほら、行くぞ』
彼は再び私の手を取ると、振り返り歩き出した。
一瞬見えた、優しく柔らかい笑顔。
その笑顔に胸を引っ掻かれたようなくすぐったさを感じながら、彼の背中を見つめた。
透明な自動扉をくぐり、明るいエントランスホールに入ると
途端に自分が場違いな気がしてくる程に高級感の漂う落ち着いた空間が広がった。

