彼は見つめる私の視線に気付くと、それに応えるように口を開く。

『雨…、まだ止みそうにないな』

いつも通りの声。
けれどそれが平静を装ってること位、すぐにわかる。

だって耳、真っ赤になってる…。

彼の心に触れる瞬間にいつも感じる胸が狭くなるような、その不思議な感覚は
きっと私がずっと夢見てきたそのものなのかもしれない。

傍にいるだけでドキドキして、目が離せなくなる。
こんな恋がしたいとずっと思ってきた。

「…私達、恋人なんですよね」

彼はこちらをちらりと見ると、一言呟いた。

『じゃないと困る』


雨に閉じ込められた二人だけの空間。
雨音がいつもより甘く鼓膜を震わせるのは、きっと彼の言葉のせい。

「ごめんなさい、なんか…嬉しくて」

思わず零れた私の言葉に応えるように、小さく咳払いをした彼を振り返ることが恥ずかしくて
私は雨に打たれる噴水をじっと見つめた。