『…花緒。
花緒』
夢だろうか。
私の名を呼ぶ、彼の声が聞える。
『花緒』
それが夢ではないと気付いた瞬間、突然身体中を何とも言えない怠さが襲った。
目を薄っすらと開くと、薄暗い部屋の中、彼の姿と思しき姿がこちらを見下ろしている。
『起きた?』
ピントがうまく合わないけれど、そう囁いた優しい声は紛れもなく彼のものだ。
「うー…ん…。
え…あれ…?」
確か…私は、彼のベッドのそばで…。
寝ぼけた頭を必死に起こそうとするが、頭はどんどん混乱していく。
少し身動ぎをすると、背中に感じる柔らかい感触。
その微かに聞こえたスプリングの軋む音で、
私はようやくベッドの上に横たわっているのだと気が付いた。

