彼を困らせるような事はしたくないと思うのに
体中が、私の細胞のひとつひとつが目の前の彼を求めている。
行き場のない感情を埋めるように、
その胸へ耳を寄せると規則的に脈打つ彼の鼓動が静かに耳に届いた。
『…まったく、君って子は』
言葉とは裏腹に甘く囁くように言うと、私の髪の毛をゆっくりと彼の手が撫でる。
それを合図に再び顔を上げると、彼の唇が重ねられた。
彼に触れられる度、際限なく深まっていく私の欲。
私はずっと、こんな私がいることを知らなかった。
それだけじゃない。
ただ同じ時間を過ごせることが、こんなにも嬉しくて幸せな事。
その顔を見たい一心で先を急ぐ気持ち。
その全てが初めてのことだった。

