彼はそう言ってこちらに手を伸ばすと、荷物の入ったトートバッグの持ち手に手をかけた。
緊張で強張った手を解くと、彼の手に荷物を預ける。
『はい、これ』
そう言ってこちらに伸びてきた手に反応するように、咄嗟に手を差し出した。
固くひんやりとした感触に、思わず掌に視線を落とすとそこには鍵が握られていた。
「えっ!これ…」
『花緒用に作った鍵だから返さなくてもいいよ。
なくさないようにね』
まるで子供に言い聞かせるように微笑む彼は至って自然で、
もしかしたら彼にとっては大した意味などないのかもしれない。
けれど、たかが合鍵だと言われたとしても
私にとってはまるで彼の一部になれたような、そんな大切な証のように思えた。

