『あ…有松さん…だって』
『え……って私ですか!?』
理央は目の前に差し出されたそれを、恐る恐る手に取ると画面に触れた。
『…もしもし』
『あ…はい、日比野です。しょ、うか先輩の電話ですが…』
そのぎこちない話し方が、彼女の緊張を物語っている。
私は隣でその声を聞きながら、もう胸の痛みがさほど強くないことに気付いていた。
きっと、私は諦める決意ができたんだ。
『あ、あの…、この間はごめんなさい…。
いえ、本当に私の問題で…』
そう言いかけると、理央の声色が変わる。
『え?あ、明日ですか?…はい、大丈夫です』
単語から推測すると、恐らく明日、会う約束をしているのだろう。
彼女は何度か相槌を打った後、電話を切った。

