COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―


『あ、あの有松さん…でしょうか…?』

少しの間が空いた後、花緒は目を見開いた。

『あ、え…?』

慌ててスマートフォンの画面を見つめては、耳に当ててと落ち着かない様子に何かあったのだと察した。

「花緒?」

『ごめんなさい、間違えました!!!!』

そう言ってスマートフォンを耳から離すと、画面を何度もタップして電話を切った。

「どうしたー?あれ、私間違えた?」

『…もうーーっ!昭香さん!!間違えてます!』

「ごめんごめん!!」

花緒はその顔を真っ赤にして、座ったまま地団駄を踏んだ。

わざとではないものの、すぐさま謝罪の言葉を口にした時、
花緒の手の中にある私のスマートフォンが着信音を奏で始めた。

訪れた沈黙に、その無機質な音がだんだんと際立っていく。