『わぁー、私まで照れてきました』
そう言って花緒が両手で口元を隠す。
ゆっくりと隣に座る理央を見ると、どうやら脳内での処理に時間を要しているらしく
見事にフリーズしていた。
次の瞬間、理央が勢いよく立ち上がった。
私もそれと共に立ち上がると、勢いよく理央の口元へ手を押しあてた。
『っっええええもごおおおおおおおおお!!!!!』
何とかギリギリ間に合った。
その耳をつんざくような雄叫びを塞ぎこむのも私の役目だ。
優香の家はマンションなので、クレーム対策の為もあるが
そうでなくても彼女の良く通る声はシンプルにうるさい。
花緒がクスクスと笑いながら、人差し指を口の前に立てる。
『理央ちゃん…っ!ここマンションよ…!』
『わーもねんなあい』
それに答えるように発せられた理央の声は、私の手に阻まれてとても間抜けなものだった。
花緒はその様子を見て、勢いよく吹き出すと机に撃沈した。

