「ごめん…、会社で軽率だった」
『違います!!謝りたいのは、私で…
知らなかったとはいえ、無神経でした』
ごめんなさい、そう言って彼女はゆっくりと私に頭を下げた。
そうだ。
この子はこういう子だった。
誰より優しくて、思いやりがあって、そして不器用で
人の気持ちを軽くあしらったり、見て見ぬ振りをすることが出来ない。
『私、昭香先輩が大好きです。今の会社に入った時からずっと憧れてました。
でも…有松さんのことを諦めることはできません』
『何度考えても…無理でした』
彼女は凛とした態度のまま、私をまっすぐ見つめて言った。
けれどよく見れば、その大きな目には今にも零れ落ちそうなほどたくさんの涙が溜まっていた。
『だから…私、嫌われてもしょうがないって…』
その言葉の語尾が僅かに震える。
一人で何を背負いこんでいるかと思えば。
そうか、そうだったんだ。
それでこんなにも彼女は思い悩んでいたんだ。
夜も眠れなくて、仕事に支障をきたすほど。

