「ごめん、ウソウソ!
で、話って?」
『あ…あの……』
「勇太と何かあった?」
彼女の話を促すように言葉をかける。
こうでもしていなければ、彼女は今にも押し黙ってしまいそうだった。
『いえ…あの、私…
この間聞いちゃったんです…』
「…え?」
『昭香先輩と伏屋室長が話してるの…
27階の、バルコニーで』
その瞬間、頭の中でその光景がフラッシュバックする。
手にしたコーヒーの温度。
雲一つない真っ青な空。基くんの笑顔。
そして…。
“「片思いもいいとこ!」”
ずっと胸に秘めてきた気持ちを吐き出した私の声。
沈黙の間に、頭の中で何度も何度も繰り返すが
誤魔化しようのないことだけはすぐに気付いていた。

