『何があったか知らないけど、仕事中は切り替えて。
体調が悪いなら帰りなさい』
口調こそ落ち着いているものの、その厳しい一言にオフィスの空気が張り詰める。
昭香先輩は優しくて、厳しい人だ。
それは他人に対しても、自分に対しても。
そんな昭香先輩が言うからこそ、その言葉には重みがある。
その時、優しい口調が二人の間に割って入った。
『昭香さん。
少し休憩させましょう?』
そう言って花緒先輩は優しく微笑むと、続けた。
『ほら理央ちゃん、休憩していらっしゃい。
続きは帰ってからいいから。ね?昭香さん』
花緒先輩がそう投げかけると、昭香先輩は天井を仰ぐと理央を見た。
『言い過ぎたね、ごめん。
いつもより長く休憩してきてもいいから!』
『昭香さんもですよ。ね、休憩!』
『そうね』
そう言って笑った花緒先輩の笑顔は、まるで儚げに咲く花のようで
その柔らかな笑顔に、オフィスに張り詰めた緊張の糸はゆっくりと溶けていくようだった。

