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理央のそのどこか挙動不審な不自然さは、オフィスにいる全員がすぐさまそれに気付くほどにおかしなものだった。
そしてそれは仕事中も尚、続いた。
お昼を過ぎてもその様子は変わらず、ついにその時が来た。
『理央、
会議資料、共有フォルダに入れてくれた?』
昭香先輩が手を動かしながら訊ねる。
理央の反応はない。
私は目の前のデスクに座る理央を視線だけ動かすようにして見た。
理央はマウスに手を置いたまま、止まっていた。
それは固まっているというよりも、心ここにあらずといった感じだ。
今日一日、こういった彼女の様子を幾度か目にしていた。
いつもならば、そういう時は各自息抜きがてら休憩に出たりもする。
けれど今日はそれさえもない。
『理央!!』
その様子に、遂に昭香先輩は声を荒げた。
『は、はい!!すみません!』
理央はすぐさま顔を上げたが、
状況を把握できていないのかあたふたと慌てる。

