SHOGO.
He can't help falling in love with her.
初めて“彼女”の笑顔を見た瞬間。
俺はついに断念した。
ああ、やっぱり俺はこの人を好きになるんだ。
「よしっ!
それじゃあ配達行ってくるよ!」
お弁当箱が隙間なく詰められたプラスチックの箱を手にすると、
キッチンからホールへ受け渡しをするためのカウンターから声をかける。
『はいはーい!』
元気な声と共にそこから顔を出したのはこの店のアルバイトの女性。
彼女は開店当初から働いてくれているオープニングスタッフだ。
女性といっても色っぽいことは何もない。
何と言っても彼女は俺のお母さん世代の主婦。
けれどこのお店の雰囲気にとても合っていて、明るくその気さくな性格から
まるで実家に帰ってきたような気分になる、とお客様からも評判だ。
『あ、今日から新しいお客さんのところね!
よかったわね、新規受注!』
手が伸びてくると俺の右肩をばしっと叩いた。
その様子は本当にお母さんのようだ。