「…春田くんかな」

ベッドの上に置かれたそれを手に取ると、表示されたポップアップに思わず身を固めた。

そこに表示されていたのは元彼の名だった。

震える手でメッセージを開くと、まっさらなチャット画面に一つメッセージが表示された。

《優香、元気にしてる?》

周りの音が消え、自分の呼吸する音だけが体の中に響く。

どくどくと脈打つ鼓動はどんどん速さを増していくが、それさえも他人事のように遠く感じる。

「…やだ

いやだ…」

その場に膝から崩れると、耳を塞いだ。


『優香、ずっと一緒にいてくれる?』

またあの声が聞こえる。
それと同時にその笑顔が浮かんだ。

春田くんとは違う、はにかむような笑顔。


その笑顔が、大好きだった。

ぼろぼろと零れ落ちた涙が固いデニム生地に落ちて、ぱたぱたと音を鳴らす。

「うぅ…っ」

声を押し殺しても、溢れ出したそれは止まることを知らない。

「もう消えて…っ」

吐き出すように放った言葉は冷えたフローリングの上に静かに落ちた。