「私は…楓の気持ちには答えることができないから。
だからこれ以上こういう関係も続けられない」
その言葉に彼の表情が一瞬歪むと、伏せた瞳が揺れたように感じた。
『…じゃあどうしてここに来たの?』
二人の間に彼の小さく呟いた声が落ちる。
彼はゆっくりと顔を上げ、私を見た。
その目には、怒りにも似た感情が宿っているように見てとれた。
このまま彼に恨まれてもいい。
それでもこれが二人にとって、楓にとって一番いい選択だという私の決意は揺らがなかった。
悲鳴を上げるように痛む胸に、彼から視線を外す。
その瞬間。
彼の腕が私の腕を掴み、強い力で引き寄せた。

