彼女はカツカツと音を立てながらこちらへ歩いてきて、目の前に立った。


『ねえ、そのボールペン!』

よく通るその声に、視線を上げる。


彼女が目の前に差し出したそれに、僕は思わず目を見開いた。

その手には、クマのついたボールペンが握られていた。

『私とおそろいなんだけど!!
趣味悪いってよく言われるんだよー!

私は可愛いと思ってるんだけどね!』


気が合うね、彼女はそう付け加えて僕に笑いかけた。
あまりにも美しいその笑顔に、思わず見惚(みと)れる。


僕はその瞬間、目の前で笑う
映画のヒロインのような彼女に恋をした。