あれは…
「春田くん」
私の呼ぶ声に気付き、こちらを見た。
『本郷さん!』
まただ。
主人を待っていたかのようにみるみる笑顔になる。
目を凝らしたらブンブンと揺れる尻尾が見えそうだ。
グレー色のパーカーを着た彼はまるで少年のようで、いつにも増して可愛く見えた。
「あれ?配達?…は終わったみたいだね」
よく見れば、いつもお弁当を入れている深緑色のプラスチックのコンテナを手に持っている。
『いや…ここ数日すれ違いで本郷さんの顔見てないなぁって!
皆さんに聞いたらもうすぐ戻るって言うから…』
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