『花緒先輩っ!!盗み聞きなんてー!』
理央がむっとした顔で花緒先輩を見上げる。
『ごめんね?
でも理央ちゃん、声が大きいから…』
ひとしきり笑った後、花緒先輩が席に着く。
「あれ、昭香先輩は…?」
辺りを見回すが、彼女の姿はない。
『先に行って仕事するみたい。
最近忙しいものね。私達も手一杯だし、昭香さんが一人で結構な量の仕事持ってるのよ』
少し心配そうな顔で花緒先輩が言う。
花緒先輩の言った通り今はちょっとした繁忙期で、お互いになかなかゆっくり話す時間も取れない。
取り分け沢山の仕事を担当している昭香先輩にとっては、逆にその時間が負担になってしまう可能性もある。
けれど昭香先輩の様子が少しだけおかしいのは、きっと繁忙期のせいだけではないはず。
時間を取れるようになったら、話をしたい。
いつかの昭香先輩が私を助けてくれたように、私もそうできたら。
視線を彷徨わせていると、私をじっと見つめる花緒先輩と目が合った。
『…それにしても優香ちゃん、今日はいつにも増して可愛らしいのね』
花緒先輩はそう言ってふわりと微笑んだ。
“お似合いですよー!!”と煽てる服屋の店員さんの言葉はどうも信用ならない。
けれどこうしていざ皆に口々に褒められると、
少しだけ恥ずかしいようなくすぐったい気持ちになった。

