「すごく素敵ですね。
アンティーク、お好きなんですか?」

『はい、休日にお店を巡ったりもしますね』

右隣に腰かける彼を見つめた。

私が知っている彼はまだほんの一部。

彼のことをもっと知りたい、
部屋に溢れる彼の世界にそんな欲求を掻き立てられた。

『でもほとんどはオーダー品です。

あのスペースにはこんなものが欲しい、そんな風に想像するんですよ。

それ以外はいらない』

そう言いながら本を袋から取り出すと、深くソファに腰かけた。


『言わば、この部屋は僕の欲が具現化したようなものです』

その長い指はもうすでに手にした本のページをめくり始めている。

このまま彼の世界に飲み込まれてしまいそう。

でもそれが心地よく感じる私はもうすでに彼自身に飲み込まれているのだろう。