その部屋に足を踏み入れると、
優しくも重厚感のある木の香りがふわりと香った。
高そうなアンティークの棚には手の込んだ造りの置き時計。
優しい色合いのステンドグラスの間接照明。
素人の私が見てもわかる。きっと高価なものだろう。
味のある深いブラウンのフローリングが部屋の雰囲気を際立たせている。
木の長方形のテーブル。
床置き型の大きなブラウンのソファは大人が四人ほど並んで座れそうだ。
『そこ、座っててください』
扉を入ってすぐ、棚の上にある木のトレーに
ガチャっと音を立てて鍵を置くと、彼は言った。
言われるままブラウンのソファへ腰を下ろすと、目の前のテーブルにコースターが置かれる。
その上にグラスに入ったお茶が乗せられた。
そのグラスもとても凝ったカッティングが施されていて、
手を伸ばすのがためらわれるくらい美しいものだった。

