次に有松さんが口を開いたのは、帰りの電車の中だった。 『…嫌だったなら、すまない』 すぐ隣に座る彼を見る。 その顔は窓の外を向いたまま。 断りづらかったのは確かだが、嫌ではなかった。 「イヤじゃ、ないですよ」 私の言葉に反応するようにこちらに顔を向ける。 『そうか』 そう言うと彼は まるでほっとした、とでも言うかのように眉を下げて笑った。 また、あの笑顔だ。 耳の後ろがドッと熱くなる。