皮むきの包丁の持ち方や、じゃがいもの芽の取り方。

ひとつひとつ手元を見せながら丁寧に教えてくれた。

春田くんがスイスイ剥いていくのを見て、
自分で剥き始めるが、これが思いのほか難しかった。


「どうしよう…これ夜が明ける…」

いつもの笑い声が隣から聞こえたが、
まだ慣れていない包丁の扱いが怖く、手元に集中した。


『…立ち入ったこと聞いてもいいですか?』

「なんですか…」

そう答えたものの、手元に集中していないと手が滑りそうだ。


『どうして、作りたいと思ったんですか?』

いつもの声のトーンと少しだけ違う声に、顔を上げる。


「…食べてほしい人がいるので」

まっすぐ彼を見て言う。


その時、


ボトン!!


手が滑り、じゃがいもがシンクに大きな音を立てて落ちた。


『っ手!!!!

怪我してない!?』

驚く間もなく彼が私の手を掴む。