閉店後の店の中。

正方形にカウンターで囲まれたキッチンに立つ。
『はい、これ!』

そう言って手渡された赤いエプロン。
「これ何枚もあるの?」
エプロンを指して聞く。

『あ、それバイトさんのやつです!

でも僕が週末に持ち帰って洗ってるから綺麗ですよ!』


バイト、いたんだ。

そういえばそうか。
平日は毎日配達にも出てるんだし。

そんなことを考えながら身支度を済ませた。

『えっとまずは…本郷さんはどれくらい料理ができないんですか?

卵焼きは作れる?』


「…スクランブルエッグなら」

そう答えると、

『じゃあまず、じゃがいもの皮むきから教えますね!』


初心者中の初心者の私を馬鹿にするわけでもなく、彼は明るく言った。