秘密のキスで、甘く溶かして。






午後の授業を終え、ついに訪れた放課後。
保健室の前で彼を待つ。


私とは正反対の世界を生きる水葉くんは、今更ふたりで会ってどうしたいのだろう。

私が彼に話すことといえば身だしなみだけ。


「松橋さん、お待たせ」

数分もしないうちに水葉くんはやってきた。
やけに嬉しそうな笑顔を浮かべながら。


「おいで。
誰かに見られると目立つし」

まるで自分の家のように保健室へと入る彼。
見るからに慣れている様子。


「保健室の先生がいたらどうするつもりだったんですか」

残念ながら中に入ると誰もおらず、彼の予想通りだったけれど。