「本当に真面目な人だなぁ、キミは」
“真面目”、それは自覚済みである。
逆にそれしか取り柄のない人間。
面白味のない人間ではあるが、生きることは楽である。
先生に目をつけられることも、他人から激しい嫉妬を買うこともない。
真面目であることが、今の平穏な生活を支えていた。
それに比べて遊び人の不真面目な水葉くんはどうだ。
女子をたぶらかし、二股は常習犯。
激しい嫉妬を向けられ、いくつか怪我を負っていたこともあった。
バカらしい、と思う。
真面目に生きるほうが楽だというのに。
彼の気持ちが私にはわからない。
「それでは私はこれで」
「待って」
彼の横を通り過ぎようとすれば、掴まれる腕。
力は強く敵いそうにない。



