「それに思ったんだけど、どうしてキミはいつも俺に敬語なの?」
「距離を置くためですが」
「じゃあ禁止ね。
これからは誰よりも近い距離になるんだから」
それは否定させていただきたい。
決して距離までは詰められないと。
「水葉くんに禁止される義理はないです」
「素直に従っておいたほうが身のためだと思うなぁ」
身の危険を感じた私は、一歩後ろに下がったけれど。
それを見て彼は笑うだけ。
なんだか負けた気分がしたため、きつく睨んでみる。
「そんな睨まないで。
せっかくの綺麗な顔が台無しだよ」
すると彼は笑みを崩さないまま私の目の前へと立ち、私のメガネをゆっくり外してきた。
「奪う気ですか?」
「んー…あっ、やっぱり。
度なしだねこれ」
「…っ」
この人は。
どこまで私を知る気なのだ。
彼の言う通り、私がかけているメガネに度は入っていない。



