「松橋さん、聞こえてる?」
その声が近づいてきて、仕方なく顔をあげれば視界に映る水葉くんの姿。
明るい茶色だった髪は黒く染まっていて、ピアスもしていない。
シャツのボタンも上までとめており、きちんと着こなしている。
確かに真面目になったけれど、漏れる色っぽさは相変わらず。
真面目に見えてどこかキケンな雰囲気すら感じられた。
余計に人気が上がりそうである。
「なんでしょうか」
「チェックしてよ、キミが俺の担当なんだよね?」
「ああ、それならもう大丈夫です」
「ちゃんと隅々まで調べ上げるのが地獄目の松橋さんなんだよね?来て、こっち」
嬉しそうに笑う彼はそれほど褒められたいのか。
それとも私とふたりになりたいのか。
いずれにせよ、ここは折れないと周りの視線が煩わしい。